知床四季のフォトエッセイ 達成感 No,12 2003年6月号 著者:知床アトリエ夢民
2003.06.21
達成感 No,12 2003年6月号 知床四季のフォトエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

達成感 No,12 2003年6月号


 「知床山の会」と聞くと 毎週のように あっちこっちの山に登っている アルピニストの集まりのように思うが 実際は年2回しか活動していない(飲み会だけの活動あり)我クラブの名前だ。

 年2回というのは だいたい 気温の安定している 6月下旬と9月下旬に決めている。

 6,7年前に 「何か 知床に住んでいるんだから それらしいことしようよ!」と 最初は3,4人で とりあえず近くの羅臼岳に登りはじめた。ところが 硫黄山、斜里岳、摩周岳と回を重ねるごとに いつの間にか15人程の団体になってしまった。

 メンバーは6歳から60歳ぐらいまでと幅広くて 職業も 年齢もバラバラだ。中には 東京、千葉、青森から参加する人もいる。

 リーダーは 登山マラソンも やったことがあるという 知床の「自然ガイド」の仕事をしている バリバリのアウトドアマンだ。

 その人に言わせれば 私と私のごく親しい友達が「この山の会の最難関の2人だ!」というのだ。

 だから私達は 念入りな準備を 1ヶ月前から始める。まずは早朝に早足で歩く。それに馴れたら 知床八景の1つと言われているオロンコ岩に登る。この岩は 石段が 200段あり 約15分程で登れるが 勾配は急で 途中3回は休まないと登れない。

 頂上は高山植物が密集していて ちょっとした 原生花園気分を味わえる。目の前には オホーツク海が広がり 夕日の時間は 特におすすめだ。

達成感 No,12 2003年6月号 知床四季のフォトエッセイ 著者:村石孝枝 写真:オホーツクドットコム

 海に 大きな夕日が きれいに落ちていくのを見ると「地球ってやっぱり円いんだ」と思う。そうすると なんだか「生きているっていいなあ ありがとう。しあわせ」と どんどん ポジティブな気分が溢れてくるから不思議だ。これはもう 無条件に自然の力。いいえ 知床の力 とも言えるかもしれないなあ。

 こうして オロンコ岩に毎日のように登り すっかり登山をしたような気持ちになってから本番を迎える。「今日こそは みんなに迷惑かけないように頑張るよ」と 友達と握手して 登山口に立つ。

 登山は 最初の2時間が本当にきつい。「もう イヤダ」という気持ちに最低でも3回はなる。

 リーダーは 私達2人の顔色を見ながら 絶妙のタイミングで休憩を入れる。

 仲間達は「はいチョコレート。チーズもあるよ」「荷物持ってあげるか」など 気を使ってくれる。おかげで次の日に 体重を計ると 必ずプラスになっているのがちょっと気になるけど・・・

 でも この2時間を過ぎると 急に体が軽くなる。それは他のみんなも同じで どんどん登る速さが増す。こうなるともう ついてゆけない。登山口での固い決心も うちのめされてとうとう「休みたい」と 口に出してしまう。「いいよ」と みんな言葉は やさしいけど 視線は前方を向いたままで 「登るぞ!」と いう気迫に満ちている。

 登山というものは 人に合わせるのではなくて 自分のペースを守って 登ることが基本らしい。

 まあ 私と友達の2人だけに されたら いつまでたっても頂上に着かないので メンバーの中から必ず1人残ってくれる。私達は けっして挫折していないのに なぜか「挫折隊」とみんなから呼ばれている。

 しかし もう挫折隊になってしまえば 気がラクだ。森を通りむける風が 心地いい。何しろ自分のペースで登るのだから・・・

達成感 No,12 2003年6月号 知床四季のフォトエッセイ 著者:村石孝枝&オホーツクドットコム

「みんなのように あんなに急いで登ったら こんなにかわいい知床すみれ 見られないよね」と 言うと「歩きながら いろんなものを感じているの。五感をフルに活用しながら登ったら疲れているヒマないよ」と 残ってくれた挫折隊のリーダーは言う。「ふ~ん ということは 私達2人は五感をバラバラに使っているからこんなに疲れるんだ」と 自分に都合のいいように解釈しながらドッコイショと声をかけて またひたすら登る。

 先発隊より 1時間程遅れて 挫折隊が頂上に到着すると拍手で迎えてくれる。この時は やはり小さな達成感で いっぱいになる。自分の足に「よくやったね」と声をかけてやる。

 そうだ もしかしたら 山に登るということは この達成感を味わう為なのかもしれない。

 日々生活をしていると もう十分に頑張っているのに もっともっとという思いが先走ってしまい「ここで終わり!」という目安がない。だけど 山にははっきりと頂上という 終わりがあるから たった1日で それぞれに達成感を感じ 満足できるんじゃないかなと思う。

 下山して 反省会という名の宴会を 我が家でバーベキューをやりながら開く。この時飲むビールはやっぱり最大の 達成感の味かなあ。


著者:知床四季のエッセイ 村石孝枝(アトリエ夢民)
写真:オホーツクドットコム
1枚目:知床五湖 6月
2枚目:知床フレぺの滝 6月
3枚目:知床カムイワッカ湯の滝 6月





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知床四季のエッセイ著者著作:村石孝枝(アトリエ夢民)
写真撮影著作・HP制作:オホーツクドットコム


海に流れ出す知床半島「カムイワッカの滝」
今では懐かしい知床半島「カムイワッカ湯の滝」危険な滝
今では懐かしい知床半島「カムイワッカ湯の滝」お目当ての湯壷の滝
知床五湖に近い岩尾別にある「ホテル地の涯」


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北見市が舞台のアニメ『道産子ギャルはなまらめんこい』漫画家・原作者 北見市出身
石北本線アニメ沿線?の町、ガンダム(遠軽町)&道産子ギャルはなまらめんこい(北見市)
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2003.06.21 10:28 | 固定リンク | 未分類

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